二分脊椎を持つ新生児の命 半日かけて両親を説得

産まれたばかりの子を前に茫然自失、手術を容易に受け入れることのできない若い2人の親がいた。子にとっても、自分たち親にとっても、苦しみの中で生きることになると心配したのだ。
順天堂医院脳神経外科の新井一氏の前には、小さな新生児がいた。背中には中枢神経の先天奇形──脊髄髄膜瘤、別名“二分脊椎”を持っていた。頭蓋から脊椎を走り、腰仙骨まで到達する脊髄神経が、胎内での栄養や遺伝、環境などの因子で障害を受け、背部に膨らみ体外に露出する奇形。奇形部から髄液が漏出し感染のリスクも高く、神経障害によって運動麻痺や知覚障害、排尿障害を起こし、死亡することもある指定難病である。手術で“生”を得ても、重い障害を持って人生を送ることもあり得る。その“生”が親と医療者の間で揺れていた。
「手術をすればきっと良くなります。手術をさせてください。お願いします」
新井氏は両親に新生児の脊髄周囲のくも膜を剥離・切開し、背髄を覆う硬膜と筋層を縫合し閉鎖する手術内容を丁寧に説明した。両親はなかなか首を縦に振らなかった。手術が適用できる出生後48時間のリミットが迫っていた。赤ちゃんの自己修復能力は高く、きっと治る、その後も自分が全力で治療しますと新井氏は言った。「30年ほど前の症例です。一度では終わらず、計二、三度手術したでしょうか。水頭症を併発しましたがシャント手術を行うことで回復しました。最も忘れられない症例です」
助教授から教授時代には年間200症例以上の脳神経外科の手術を手掛けてきた。小児についても水頭症や髄膜瘤、脳腫瘍など数多くの症例を経験してきた。それでもこの症例に“原点”があるという。
「この子の手術の両親への説得には、半日かかりました」
小児脳外科の原点は可塑性と脆弱性の両立
新井氏は順天堂大学医学部を卒業し、2年間の留学生活を経て帰任後、脳神経外科医として本格的にスタートした。頭部外傷も脳腫瘍も動脈瘤クリッピングもこなした。先輩の医師たちが敬遠した小児脳外科に取り組み始めたのには、当時助教授だった佐藤潔氏(現順天堂大学医学部脳神経外科特任教授)の存在があった。
米国留学で小児脳外科を学び帰任した佐藤氏は、小児病棟の片隅に5~6床の小児室を作った。なぜ“一角”なのか。手掛け始めたという事情もあったが、当時の脳神経外科教授石井昌三氏の「診療科内に壁を作るな」という方針もあったからだ。2人は手術室に入り、小児脳腫瘍、小児水頭症、小児奇形、そして二分脊椎髄膜瘤と、新生児・乳児の顕微鏡下マイクロサージェリーを手掛けていく。
「小児には可塑性(Plasticity)と脆弱性(Vulnerability)の両方があります。可塑性とは多少損傷しても自己修復能力があること。脆弱性とは大人の脳に比べて弱いこと。手術による損傷を最小限に抑えながら、柔軟な可塑性に期待します」人は自己治癒力という強さを持ち、一方で生身の弱さも持つ。小さな乳幼児は守ってあげたい存在である。救いたいという思いは自然と強くなる。
Profile

新井 一
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- 1979年
- 順天堂大学医学部 卒業
順天堂大学医学部脳神経外科
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- 1981年
- 米国NIH(国立衛生研究所)神経化学研究室
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- 1984年
- 順天堂大学医学部脳神経外科 助手
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- 1987年
- 自治医科大学第一生化学教室
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- 1988年
- 順天堂大学医学部脳神経外科 講師
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- 2003年
- 医療法人秀和会 秀和綜合病院 副院長
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- 1993年
- 順天堂大学医学部脳神経外科 助教授
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- 1995年
- 米国フロリダ大学脳神経外科
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- 2002年
- 順天堂大学医学部脳神経外科 教授
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- 2008年
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長
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- 2011年
- 順天堂大学大学院医学研究科長・医学部長
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- 2016年
- 順天堂大学 学長
- 資格
- 日本脳神経外科学会認定医
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